CULTURE

オフショア開発を円滑に進めるためのポイント

私は6年以上にわたってフィリピンでオフショア開発事業に携わってきました。今回はこれまでの経験から学んだ「オフショア開発を円滑に進めるために心がけている」について共有したいと思います。カタコトの英語と格闘しながら、現地エンジニアとの信頼関係を築いてきた私の話を聞いてください。

対象読者

この記事は、これからオフショア開発を検討している日本人エンジニアや、すでにオフショア開発に携わっている方を対象としています。この記事を読むことで、オフショア開発を円滑に進めるためのポイントを理解することができます。また、価値観などの違いに過剰に驚いたり慌てたりせずに済むでしょう。

オフショア開発を円滑に進めるためのポイント

1. 使用するサービスツールはグローバルに使われているものを選ぶ

オフショア開発を行う際は、コミュニケーションツールやプロジェクト管理ツールなど、さまざまなサービスツールを利用することになります。その際、グローバルに広く使われているツールを選ぶことをおすすめします。
例えば、チャットツールであればチャットワークではなくSlackを、プロジェクト管理ツールであればBacklogではなくJiraを使うことです。これらのツールには英語のドキュメントが充実しており、英語での情報が豊富に提供されているからです。

2. 英語の完璧さにこだわりすぎない

オフショア開発では英語でのコミュニケーションが必須ですが、完璧な英語を話すことにこだわりすぎる必要はありません。特によくあるオフショア先の国の場合、英語は母国語ではないため、現地のエンジニアたちも英語を学んで使っています。
そのため、日本人エンジニアがカタコトの英語で話しても、エンジニアたちは懸命に理解しようとしてくれます。また、彼ら自身もdo、doesを間違えたり、単数形と複数形を混同したりすることがあるので、完璧を求めすぎる必要はありません。大切なのは、伝えたい内容が相手に届くことです。「Me、今日、会議、行く」そんな英語でも理解してくれます。ただし、リスニングに関しては慣れが必要です。初めのうちはテキストベースのコミュニケーションを重視し、AI翻訳ツールなどを活用したり、ゆっくり話してもらいながら、徐々に慣れるよう努めましょう。

3. 働き方の違いに理解を示す

日本は今こそ働き方改革が進んでいますが、残業に対する抵抗感はまだまだ少ないです。一方、海外では必ずしもそうではありません。
例えばフィリピンでは、家族のイベントを何より大切にする傾向があり、定時になったら帰宅する人が多いです。もちろん必要なときは残業をするものの、残業が続くのは相当苦痛に感じるようです。
こうした働き方の違いを理解し、尊重することが大切です。

4. 宗教に対する理解

フィリピンをはじめとする多くの国では、宗教が人々の生活に深く根付いています。そのため、食事の制限があったり、特定の日を祝ってはいけなかったり、働いてはいけない日があったりします。
オフショア開発を行う際は、こうした宗教的な習慣についても理解を示す必要があります。日本人は他人の宗教に配慮する経験が少ないかもしれませんが、相手の文化を尊重することが円滑なコミュニケーションにつながるのです。

5. 情報の伝達ミスが起こりやすいことを意識する

オフショア開発では、言語や文化の違い、日本チームとオフショアチームの持っている情報の違いから、情報の伝達ミスが起こりやすくなります。これは確実に大丈夫だと思っていても、伝えたつもりのことが相手に伝わっていなかったり、意図と違う形で伝わっていたりすることがあるのです。
そのため、伝達ミスを完全に防ぐことよりも、ミスが起きてもダメージを最小限に抑えられるような方法を考えることが重要です。具体的には、重要な情報は必ず文書化して共有する、定期的に認識のすり合わせを行う、成果物をしっかりと定義し、レビューを行うなどの工夫が有効でしょう。「あれ?この機能、私が想像していたのと違う…」のようなことは絶対起こると思っていたほうがよいです。

まとめ

オフショア開発では、言語や文化、習慣の違いから、さまざまな課題が発生します。しかし、これらの違いを理解し、柔軟に対応することで、多様性に富んだチームで働く経験を積むことができます。この経験は、グローバルな視点を養い、コミュニケーション能力を高めることにつながるでしょう。
ぜひ、オープンマインドで挑戦してみてください。きっとかけがえのない経験になるはずです。

記事を書いた人

中薗拓巳 / 執行役員

九州大学大学院を卒業後、株式会社東芝に入社し自社製品のクラウドサービス化を担当。その後、フィリピンでオフショア事業を立ち上げ、CEOとして現地のエンジニアチームを指導しながら複数の開発プロジェクトを手掛ける。株式会社ORGO入社後、技術・グローバル事業の統括を行う。